久々に大きい展示を見に行った。
最初の展示室に入るとき、まだ主催者がこの展示で何をしようとしてるのかわからなくて、独特の大変さがあった。専門書とか哲学の本とかそういうのを読みはじめるまでの、立ち上がりの重たさに似てるかもしれない。
天正遣欧使節というのは日本人の4人のキリスト教徒の青年で、ヨーロッパから来た宣教師とともに長崎から航路にてヨーロッパに渡りイタリアを旅した人たちだ。宣教師は、アジアでもキリスト教が広まりつつあることを4人を連れていくこと、教皇に会わせることで示し、布教に拍車をかけたかったらしい。
そして、その4人がめぐったイタリアの都市の美術品・工芸品が展示されている。
最終的な印象としては、ルネサンス期(年代としては後半のものが多い)イタリア各都市に割と普通にあったもの展示している。「割と普通」と言ったって、もちろんそうとうな金持ちにしか手に入らないものなんだけど、ルネサンス関連の展示という言葉から自分が思う印象は、当時の芸術の最先端だったり、新しい表出(表現)だったり、そういうことに焦点をあてるような展示だったからそれと違ったなと思った。展示された作品の中に、そういう意図をもって制作されたものもあったかもしれないけど、どちらかというとある程度レベルのものが中心で、展示の意図としても美術的な経過を見せようというのは薄かったように思う。
天正遣欧使節はもっともっと多くのものを見たに違いがないけれど、そのなかのごく一部がこの展示室にあって当時のフランスにだだあったというように配置されていた。だから、タイトル通りの展示だ。
作品として印象に残ったのは、メディチ家の人々の肖像画(女性が多かったが)が全体に優しい顔をしていることで、政治一家とか銀行家のイメージと違う。一方、教皇は結構威厳のある怖い顔をしていて、教皇というのはなかなかストレスの大きい仕事だったようだ。
チラシに出ている《ビア・デ・メディチの肖像》は美しい絵だった。なにが美しいのか、そういうことが書けたらいいのに、まだ筆が及ばない。使節の一人を描いた《伊藤マンショの肖像画》は、もう一つの目玉作品だと思うけどこっちは美しいというより面白い。愛嬌があった。