【CARAPACE】キャラペイスの場所 vol.9  10年ほどお世話になった財布を解いてみました。

2022年7月14日木曜日

CARAPACE

帆布と革の財布です。

vol.9 壬寅歳皐月号

目次

1.分解はいろんなきっかけになっている。
2.財布を分解する。
3.今後も分解したいと思います。

1.分解はいろんなきっかけになっている。


実際に分解の工程を見せる前に、キャラペイスに至るにあたっていろいろなものを分解してきたのは結構勉強になったなと思います。小物や服のみならず、家具や家の一部も解体してきました。

ショックだったことから言うと、結構いい感じの家具を解体したとき。木材と木材の間(ベニヤ同士の間だったかな)から補強のためのダンボール材が出てきたり、カバンの中から型崩れ防止のためであろうボール紙のようなものが出てきたり。思わぬものが出てきました。
カラーボックスみたいに、見るからに安い家具ではなくて、ほんとにちょっといい感じの家具にそんな素材が使われててびっくりやったんですが、多分もう普通に沢山のものにびっくりするような素材が使われてるんだろうなと思います。

逆に、絹の着物なんか解くと、どこまでも気を使ったような丁寧な手縫いに、解くのが恐れ多いような気分にもなります。

分解するのは、処分するため、リメイクのため、構造を知りたいといろんな理由でやってきましたが、せっかく作るんなら分解されても自信が持てるものを作りたい。あるいは、そもそもダンボール等の見せたくないような素材が隠れてしまうような裏側のできるだけないものを作ったらいいんじゃないかという考えに至っています。


2.財布を分解する。

概要

作り方の好みの違いは分解するといろいろ出てくると思いますが、はじめに言っておくと、この財布、結構ちゃんと作ってある財布だと思います。
日乃本帆布というところの財布で1万円ほどだったはず。今も同じものがサイトで売られているようです。今も1万円ちょっと。

10年ほど前に買って、確か5年ほどは私が普通に財布として使ってました。その後、私はcarapaceで財布を作ったので乗り換えましたが、先月までまるネコ堂全体の財布として使われてきました。


特に後半は毎日持ち出して・・・という使用ではなかったですが、それでも糸切れもない状態で、お札入れの折り曲げ部分の革が流石に摩耗して中の帆布がほつれ始めたという程度の状態です。

ちなみにコイン入れはこんな感じ。



分解開始

目打ちとハサミを使って分解開始。



こういう財布を作ったことがないので、定かではないですが、一番最後に縫ったであろう外側のパイピングのところから解きます。


パイピングを分解。縫いがしっかり、かつきれい。

この縫い目の裏側はこんな風になってます。

もちろんミシン縫いですが、内側から見てもきれいに縫えてますが、外側から見ても革と布のの際にきれいに糸が入っている。
どっち側から塗ったのかわかりませんが、これは、難しそう。
わたしはミシンは上手くないのでこれは自信ないです。

ミシンの調整もしっかししているので、糸が浮いて簡単に取れてくるということもなく、糸をほどくのはやっかいでした。これは全体にそうでした。


縫製前にはボンドが使われている

糸を解き終わったので、革を外します

ちょっとテカテカしているのわかるでしょうか?
糸を解く前から、くっつき方で分かってはいたんですが、革の縫い合わせの部分はボンドで接着してありました。接着は両面テープの場合もあるのですが、この製品は全体的にボンドだと思います。

ミシン縫製の場合、革の部分はズレ防止にボンド・両面テープが使われていることはかなり多いです。

別の個所の分解に飛びますが、このボンドって結構強力なので、カードホルダー部分の革は縫いがなくボンドだけで接着されてました。


それぞれのカード入れのフチは飾り線(捻)が入ってるだけで、縫いはなく裏地の布との接着はボンドのみです。

この辺、好みが出るなと思う部分の一つですが、やっぱり自分で作ってというときにできるだけボンドなしで作りたいなと見ていて思います。
こういうの理由を説明するのが難しいんですが、ボンドを全体に使って作っているということを知ってしまうと私はがっかりするという感じがあります。


しかし、少なくともボンドなしで縫製となるとこの値段でできないのはわかります。
ミシン作業は相当に難しくなり、カード入れ部分に関しては別の構造を考えないといけません。


革は相当薄い

さて、最初のパイピングに戻ります。

流石に革自体が弱っていたので、糸を取ってうちと外が取れ始めると革が裂けました。


パイピングに使われている革なんかそうとう薄い。0.5ミリ以下かな。もっと薄いかな。そんなんです。さすがに10年使うとクタクタだと思います。
全体に見ても、1ミリもある革は使われていません。こういうある程度機能的な財布であれば普通のことと思います。

キャラペイスだと万年筆ホルダーが結構薄い革ですが、それでも1.5ミリあります。
革の質感としては随分違うと思います。



形を出すための芯材

概ねこんな感じで進んでいきます。
あとちょっとハイライトは、芯材がでてきたところ。

小銭入れ部分を解くと出てきました。
これは分解途中の写真。


形をしっかり出すための補強だと思われます。

札入れ部分の裏側の補強、全体の形を出すため、などにも入っていました。

芯材には詳しくないのですが・・・紙っぽい素材です。
一度濡れたくらいでふやけて壊れるとかはないと思います。

実は芯材はもっと入っているのかなと思ってましたが意外に少なかった。
芯材は素材もいろいろありますが、財布のみならず、カバン、ベルト、時計のベルトなどの大量生産品には入っていることが多いです。

全貌

全てのパーツにまでは分解しませんでしたが、全体にこんな感じ。


ほどき終わってびっくりしたのは、帆布の部分の少なさ!
帆布の財布を買ったつもりだったんですが、いわゆる帆布って感じの黒の布はほんのちょっと。
モスグリーンっぽい裏地も薄い帆布なのかもしれませんが、いわゆるどっしりした帆布はほんまにちょっとでした。ちゃんと見てたらわかったはずなのに、実は今更ちょっとがっかり。
モスグリーンもしっかりした生地だし、綿素材だと思います。

パーツ数

あとパーツの数がすごい。
パイピング部分以外でのざっくりのカウントが以下です。
パイピング分解の過程で切れてよくわからなくなっちゃったので。

・帆布(黒) 3
・モスグリーンの裏地(帆布?)16
・革 14
・芯材 7
・金具(ばねホック) 2カ所

合計 42

これだけの材料を裁断・管理するだけでも一仕事。

全体の感想

札も、カードも、小銭も入って、でもそこそこ小さいからジーパンのポケットに入る財布、として重宝しました。

考え方が変わり生活が変って、お金の持ち方も変わると、今はこういういろいろ入る財布がいらなくなりました。カードは減り、必要な物だけをもって出かける。小銭と札と全部一緒になっている必要がなくなり、今は新しいお金の管理を模索しているところがあります。
そんな中で、この財布が不要になり分解を決めました。

素材もいいものだと思うし、縫い目もきれいでどこからもほつれてこなかったのは嬉しいです。
これだけのパーツ数のものを組み上げるとちょっと適当にやるとすぐに齟齬がでてくると思います。きれいに仕上げて、10年使って無理のこない裁断や縫製の精密さは参考にしたいなと思います。

その上で、ボンド使わないでどんなことできるかな、芯材なしでなにができるかな、そんなことは引き続き考えたいなと思いました。


3.今後も分解したいと思います。

今後も機会があればカバンや小物など分解したいと思います。
もし、使わなくなったけど処分する前に分解したいなどあればお声がけください。
一緒に分解してみたり、分解の過程をこうやって書いてみたりなにかできることを考えたいと思います。


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