ひと月ほど前に鴨居玲という画家の展示を伊丹に見に行った。
こんなにも絵がわかる、と思ったことは初めてで、何か書こうと思ったけれど、「何か書こう」と気負いすぎて何も書けなかった。少なくとも作品解説よりわたしの方がわかっているし、もっとちゃんと説明してくれよ、となんだか苛立ってしまうほどで自分にびっくりしていた。
昨日の夜、買った図録を出してきて見てると図録ではあのとき逃げ出したくなるくらいにすごいと思ったそこまでの感覚は蘇ってこなくて、早く書かなければと思い書き始めた。
去年の12月に参加した10日の円座で鴨井玲の名前を初めて知った。有名人らしいので全然知らなくてちょっと恥ずかしいと思いながら、展示がその円座終了日の翌日までだったので見に行ってきた。
鴨居玲は人を描く画家だった。
鴨居自身が言っていたようだけど、人の一瞬を捉えて描こうとしていた。それは、その描かれる人の顔の表情や体の動きにももちろん現れるが、背景によりその一瞬が強調される。
背景にモノが描かれることは少なく、多くは一定の色彩のベタ塗りになっている。
背景は塗り方は余白の取り方とあいまって、背景自体は人そのものではないにも関わらずその人の存在や感情みたいなものを感じさせる。感情というとダイナミックなイメージだけど、それはあるいは心のなかのすっぽり抜け落ちた空洞とか沈黙なのかもしれない。集中の中にある人の存在は、人の中に留まることはできず背景にまで流れ出している。だから、背景すらも描かれた人のまさにその瞬間の状況で、背景も一瞬だ。
人間の一瞬というものを捉えきっている。
描かれているのは年齢も上だったり、どうやら日本人でもないおじさんやおばさん。
通常描かれるような風景や部屋の描写という背景という脈略がない。そして、この人の置かれた一瞬の状態が「わかる」と思わされる。すごい絵だ。
吉本隆明が、
最初に戻るけれど、美術館で絵を見て逃げ出したくなったのは、描かれた人たちを見てられなくなったから。暗い絵が多かったけれど、しんどい状況にいる人の絵を見て、自分のしんどさに突き刺さって思い出されて目を離したくなっていた。
今、図録をパラパラとめくりながら、作品は1点1点語るべきなのかもしれないと思いながらも、展覧会全体で受けた印象を残しておきたかった。
こんなにも絵がわかる、と思ったことは初めてで、何か書こうと思ったけれど、「何か書こう」と気負いすぎて何も書けなかった。少なくとも作品解説よりわたしの方がわかっているし、もっとちゃんと説明してくれよ、となんだか苛立ってしまうほどで自分にびっくりしていた。
昨日の夜、買った図録を出してきて見てると図録ではあのとき逃げ出したくなるくらいにすごいと思ったそこまでの感覚は蘇ってこなくて、早く書かなければと思い書き始めた。
去年の12月に参加した10日の円座で鴨井玲の名前を初めて知った。有名人らしいので全然知らなくてちょっと恥ずかしいと思いながら、展示がその円座終了日の翌日までだったので見に行ってきた。
鴨居玲は人を描く画家だった。
鴨居自身が言っていたようだけど、人の一瞬を捉えて描こうとしていた。それは、その描かれる人の顔の表情や体の動きにももちろん現れるが、背景によりその一瞬が強調される。
背景にモノが描かれることは少なく、多くは一定の色彩のベタ塗りになっている。
背景は塗り方は余白の取り方とあいまって、背景自体は人そのものではないにも関わらずその人の存在や感情みたいなものを感じさせる。感情というとダイナミックなイメージだけど、それはあるいは心のなかのすっぽり抜け落ちた空洞とか沈黙なのかもしれない。集中の中にある人の存在は、人の中に留まることはできず背景にまで流れ出している。だから、背景すらも描かれた人のまさにその瞬間の状況で、背景も一瞬だ。
人間の一瞬というものを捉えきっている。
描かれているのは年齢も上だったり、どうやら日本人でもないおじさんやおばさん。
通常描かれるような風景や部屋の描写という背景という脈略がない。そして、この人の置かれた一瞬の状態が「わかる」と思わされる。すごい絵だ。
吉本隆明が、
文句なしにいい作品というのは、そこに表現されている心の動きや人間関係というのが、俺だけにしか分からない、と読者に思わせる作品です、この人の書く、こういうことは俺だけにしかわからない、と思わせたら、それは第一級の作家だと思います。(吉本隆明ツイッターより)と言ってたそうだけど、わたしにとってはそういう「私にしかわからんのではないか」と思わされるような絵だった。
最初に戻るけれど、美術館で絵を見て逃げ出したくなったのは、描かれた人たちを見てられなくなったから。暗い絵が多かったけれど、しんどい状況にいる人の絵を見て、自分のしんどさに突き刺さって思い出されて目を離したくなっていた。
今、図録をパラパラとめくりながら、作品は1点1点語るべきなのかもしれないと思いながらも、展覧会全体で受けた印象を残しておきたかった。
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