【CARAPACE】キャラペイスの場所 vol.5

2022年1月29日土曜日

CARAPACE


いろんな意味で今更ですが、マウスパッドを試作してみた。

vol.5 壬寅歳睦月号


目次


1.なんで旧暦で「キャラペイスの場所」を発行しているのか。


旧暦では2022年2月1日に新年を迎えます。明けましておめでとうございます。
自分でも最近までよく分かっていなかったので旧暦(太陰太陽暦)の説明をすると、月の満ち欠けの周期をもとにしたカレンダーです。新月をついたちとして、満月の頃がだいたい十五夜そして、次の新月に新しい月が始まります。この周期が約29.5日なので1か月は29日だったり30日だったりする。ざっくりいうとそんなカレンダーです。

このカレンダーを使って生活してよかったなと思った最初のことは、普段使うカレンダーが28日から31日と幅があるのに比べるとひと月が一定していること。
以前に比べて一か月というリズムを感じることができるようになりました。この1日、2日のささいと思える差が体感として実は結構ある。新暦だとついたちになってもひと月経ったというリズムの実感がなかったんですが、旧暦のついたち、つまり新月の日は本当に新しい月が始まったと実感します。「定期的に革の手入れをしたい」という気分とは相性がいいです。

そして、なんとなく見ているだけだった月が時間の経過を知らせるものになったのも面白く、カレンダーを見て日付を「確認」するのではなく、本当に自分の外のもの(月や地球)が動いるのを見て時間が過ぎていくのを実感すると、ちょっと時間の枠組みが変わった感じがします。

そういうある種の面白さがあるという、何となくの動機で旧暦を選びました。


とはいえ、よくよく考えてみればキャラペイスはそもそも「時間」というものを問題にしてきました。

最初の商品は「長く使いたいリュック」。
(今は販売を終了しています。)

「長く使いたい」という言葉は時間と関係があります。そして、この言葉は特徴的なのは「長く使いたい」という「たい」の部分です。「長く使える」「長持ちする」ではなく、使っている人が、それとの時間を過ごしたいという積極的な気持ちを表しています。

そういうものが作れたらいいのではないか、と私たちはそのリュックを作りながら気づいていきました。

「長く使いたい」とはどういうことか、もう少し言葉を加えると、そのもののことを何度も意識したい、考えたいということだと思います。

これは客観的な時間だけのことではなく、自分の個人的な時間としても考えられます。

例えば、こんなことが考えられます。
ある人は毎日使ったリュックを持っている。それは5年間使っている。
そして、週に1回リュックを使った人がいる。それは20年使っている。

毎日使った方がいい、というつもりはありませんが、客観的な時間は20年の方が長いけれど、リュックと過ごした時間自体は5年使っている人は相当なものだと言えます。
「使う時間」というのをそういう風にも考えるようになりました。

そして、そのものとどんな関係を結ぶかはその人次第ですが、毎日使っても大丈夫だと思えるような丈夫なものにしたいとか、毎日使っていても楽しいと思えるものにしたいとか、そういうことを考えています。

キャラペイスの商品を過ごした時間になんらかの面白さがあればいいなと思います。
どうせ生きているなら、生きていることを面白くするようなものを作れたらという大それた意識があるのかもしれません。



旧暦の話からはだいぶズレてしまいましたが、いきつ戻りつして新暦の面白さをもう一ついうと季節への意識が変わりました。少し強引かもしれませんが革とも関係して考えられることです。

2月1日から新年、睦月が始まります。睦月は春です。

新暦の感覚では冬真っ盛り。寒いのは確かですが、今すでに日が長くなってきたり、陽の光の変化は春への気配を感じさせます。春真っ盛りに「ああ、春だな」と思うのではなく、春への小さな兆しを見つけていくのには旧暦が適していて、季節というもの対して意識を向けることが増えました。変化に目を向けるのは面白く、今までより長い時間を季節とともに過ごしています。

革との関係を少し強引に言うならば、こういったささいな季節の変化を感じられたらなら、革のよりよい手入れを考えていけるんじゃないかと思います。


2.ボンドの使用をやめました。制作に関して。

キャラペイス開始以来、主に糸を止めるのに使ってきたボンドですが、2021年末ごろから販売しているすべての商品で使うのをやめました。

今まではしっかり止めた上で、更にお守りのようにというのを、切った端の部分が見えない部分で止まるようにとボンドを使っていましたが、なしで問題ないと考えるようになりました。

実は、ボンドをつけてしまうとデメリットはあります。修理などでボンドが付いた糸を革から取ると、多少ですがボンドとともに革がめくれてしまいます。

修理不可というほどの影響は受けませんが、「解体したときも美しくあって欲しい」とか「見えにくくなっているところまでできるだけかっこよくあって欲しい」という自分の理想には反するところがありました。なので、使用をやめてよかったなと思っています。

大掛かりにボンドを使う制作はもともとしていないので、今後大きく変わるということはありませんが、糸の止め方など、更にいい方法があるか調べたり、考えたりしていきたいです。




3.キャラペイス動画

「ベルトの糸が切れたときの修理方法」を公開しました。



動画が長くなってしまいましたが、自分でやってみようかなと思ったときに参考にできるくらい細かく説明しました。
修理を考えている方などに見てもらえれば。

わざわざ細かく説明したのは理由があって、自分ができなくなっても修理できる方法を残していった方がいいのではないかと考えているからです。

まだまだキャラペイスは続けていくつもりですが、現状わたしがやらなければ、他に誰もいないので、いつかできなくなったときにもう使えなくなってしまう状況を少しでもなんとかできればと思っています。

これに関してはよくよく考えていかないといけないと思いますが、とっかかりとしてこの動画を作りました。





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