東京美術の旅1 「村上隆の五百羅漢図展」

2016年2月13日土曜日

美術館・展示

「村上隆の五百羅漢図展」(森美術館)を見に、東京まで行ってきた。
今回東京に行ったのは、この展覧会に行くためだった。



「五百羅漢図」は高さ3m、幅100mにも及ぶ巨大な絵だった。
約25mごとに、「青竜」「白虎」「朱雀」「玄武」の4つのテーマにわかれたパネルに、
五百体の羅漢や聖獣が描かれている。

その絵がある部屋に入りぱっとっ見た印象は、
「なんか忙しい」だった。

どう見ていいのかわからず、60メートルほど歩いて3つ目のテーマまで来たときに急に面白くなった。

一人ひとりの羅漢がとても個性的に見えてきた。
遠方から絵を捉えようとすると、巧妙に配置された形や色に、波に揉まれるように視線が動かされてしまう。その嵐のようなウネリに乗ってそこまで流されてきたけれど、ようやった目をこらせるようになってきた。
細かい衣服の柄、ちょっとした体勢、視線、そんなことが見えるようになり、それぞれの羅漢、それぞれの獣、それぞれの雲、に引きこまれていく。

500体もいるのに、すべての個性を構築して、すべて描き分けている。

それまで500体にしてひとかたまりの羅漢がという聖者が描かれた一枚の絵だと思っていたものが、
突然500枚の肖像画のように見えてきた。

隣り合って描かれた羅漢は、大きさや体勢も似ていることが多いのに、
一人ひとりとても違い、全く違った生き方をしてきたもの、無関係に存在しているようにさえ見えてしまう。

しばらく、そうやって一人ひとりを細かく見て楽しんでいたけれど、
疲れてきたので1歩2歩と絵から退くと、
またあの嵐がやってきて視線が早く動き始める。

そうなると一人ひとりの違いまで見えないけれど、
今度は画面をを覆う雰囲気を最初よりすこし感じ始めていた。


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2012年、この「五百羅漢図」はカタールのドーハでの村上隆の展示で公開されていた。
このオープニング前後、会場からのニコ生で村上隆が熱く語っていたのを見て、さすがにドーハまで行くことはしなかったけど、いつかこの絵を見たいとずっと思っていた。

村上隆が語っていたことはもうあんまり覚えてはいない。
多分、震災の後の美術のこと、もしかしたら日本の美術大学の問題なども語っていたかもしれない。
とにかく、その熱だけは残っていて、展示があると知ったときには行くと決めていた。