「西洋絵画のひみつ」(藤原 えりみ )を読んだ。

2019年11月20日水曜日

美術館・展示

村上隆の芸術闘争論で名前が出てきていたので、「西洋絵画のひみつ」という本を読んだ。

大きな3つの柱と小さなひとつの柱でできた本。

大きい物はひとつ目が聖書について。
絵画に出てくる聖書の場面を解説。

ふたつ目は、宗教画から風俗画へ。
ここは風俗という言葉の説明がわかりやすかった。
現代の日本で「フーゾク」というと、性風俗が思い浮かぶかもしれません。けれど、本来は「宗教界」に対しての「俗世」のことなのです。ですから、風俗画では、この世の日々のあれこれ、つまり庶民の労働や祭り、遊び、貴族の優雅な生活などがとりあげられることになります。[78]
風俗画は英語ではgenre paintingというけれど、いまいちなんだかわかってなかった。
絵というと、宗教画だった時代からの変化として普通の人の生活が描かれる、そういう対比としてわざわざ「風俗画」というジャンルが認識されるようになったということがわかるととてもわかりやすい。

絵といえば宗教画だ(った)、日常を描くということは絵画として格の低いことだ(った)という認識が特にない日本では、なぜ風俗画という言葉でそのジャンルを区切っているのかよくわからないから、わかりにくい区分になるのだと思う。

みっつ目は、ヌードについて。
なぜヌードを描くのか。西洋絵画のヌードとはどういうものか。

全体としてはこんなかんじ。

細かいことだけど個人的におもろかったことがひとつ。
最近、オランダ(ネーデルランド)絵の展示を見ることがなんどかあった。なんとなくだけど絵の大きさが小さいと思っていた。飾る場所が狭かったんだろうということは予測してたけど、具体的にはこんな事情があることがわかった。
プロテスタントの国オランダでは、貿易による富をたくわえた新興の市民階級が生まれました。(略)17世紀オランダに空前の絵画ブームが巻き起こるのです。(略)
聖堂 や王侯貴族の宮殿ではなく、裕福な市民の邸宅に飾るものなので、サイズも小ぶりで、聖書や古典文学に関する教養がなくても楽しめる絵画が求められるようになりました。[74−75]
 「プロテスタントの」とわざわざ書いているのは、プロテスタントが聖堂の礼拝像を禁止しているから。ちなみにカトリックは禁止していない。プロテスタントの勃興により、教会などの公共的な、大きな建造物での大きな絵画の発注はなくなったが、市民階級が豊かになることで、絵画の需要自体は存在し続けた。しかも、個人からの発注になるので、オランダでは風俗画が発展していくらしい。

小さいことだけど、自分が気にかけていたことが書いてあるとはっとする。
まあでもこのくらいの歴史も知らないなんて勉強不足だなぁと思った。