初めて自分で読みきった小説は斉藤洋の『ルドルフとイッパイアッテナ』だった。
黒い猫のルドルフが迷子になってしまい、出会ったノラ猫に名前を聞くと「いっぱいあってなー」と言う。それでルドルフはそのノラ猫の名前はイッパイアッテナだと思ってしまう。
その聞き方におおーっと思った。
おそらく数ヶ月後、ルドルフはやっとの思いで家に帰り着く。飼い主のりえちゃんが大喜びするだろうと思って窓から家の中を見ると、新しい黒猫とりえちゃんが楽しそうに遊んでいる。ルドルフはこっそりとその黒猫と話をして、りえちゃんに会わずにそこから立ち去る。
本当に寂しい気分になった。なんとかならないのか。どうにもならない。
最近「小説がおもしろい」と思って思い出したのが『ルドルフとイッパイアッテナ』だった。
一文字一文字、文章を追っていく。
まだ自分なんてほとんどない小学生の私はその一字一字をきっとしっかり読んだんではないか。
ゼミで本を読むことを通してその時のことを思い出すのが不思議だけれど、「ただ読む」ということに一番近かったのはその時期であってもおかしくはない。その後は、テストだったり、レポートだったり、こういうことが書いてあれば使えるな、なんて考えて読んでいることが普通になってしまった。
意識していたわけではないけど、「役に立たない」からなのか、小説はあまり読まなくなっていた。
それが、『モモ』ゼミ、『アリス』ゼミを通して小説が面白くなった。
これまで小説というものをどんなにつまらなく読んでいたんだろうと思うほどに、読み方がかわってしまった。この本はファンタジーだとか、女性蔑視的だとか、古いとか、「名作」だとか、そんなカテゴライズをしてわかった気になっていたんだけど、なんでそんなにつまらなく読んでいたんだろうとびっくりする。
もう20年程も前になるのにルドルフを読んだときに、あのどうしようもなさが未だに残っている。
「それじゃ、あんたのことを好いてくれるひとは、ひとりもいないの?」というモモの言葉と衝撃が今でも残る。その言葉が「カフカを読むことだ」という保坂和志氏の言葉(考える練習、大和書房 p86)と繋がっていく。
本の中にいる他人が自分を揺らしていく。
『はてしない物語』は『モモ』ゼミをやったあとから是非ゼミで読みたいと思っていた。
『モモ』は5-6人の大人が2日間にわたって話をしてもまだ付きない力を持っていた。そのエンデのもうひとつの有名な小説「はてしない物語」のゼミ、楽しみです。
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■ゼミ日程
第1回 2015年10月10日(土) 13時-15時
Ⅰ ファンタージエン国の危機
Ⅱ アトレーユの使命
Ⅲ 太古の媼モーラ
Ⅳ 群集者イグラムール
Ⅴ 夫婦隠者
Ⅵ 三つの神秘の門
第2回 2015年10月10日(土) 16時-18時
Ⅶ 静寂の声
Ⅷ 妖怪の国で
Ⅸ 化け物の町
Ⅹ エルフェンバイン塔へ
Ⅺ 女王幼ごころの君
Ⅻ さすらいの山の古老
第3回 2015年10月11日(日) 10時-12時
ⅩⅢ 夜の森ペレリン
ⅩⅣ 色の砂漠ゴアプ
ⅩⅤ 色のある死グラオーグラマーン
ⅩⅥ 銀の都アマルガント
ⅩⅦ 勇士ヒンレックの竜
ⅩⅧ アッハライ
ⅩⅨ 旅の一行
第4回 2015年10月11日(日) 13時-15時
ⅩⅩ 目のある手
ⅩⅪ 星僧院
ⅩⅫ エルフェンバイン塔の戦い
ⅩⅩⅢ 元帝王たちの都
ⅩⅩⅣ アイゥオーラおばさま
ⅩⅩⅤ 絵の採掘坑
ⅩⅩⅥ 生命の水
【参加申し込み】
参加費 第1-4回 8000円
(2日間通しでの参加を、前提としております。できるだけ通しでご参加ください。)
各日参加 第1-2回 5000円
第3-4回 5000円
食費 1000円(10月10日夕食、10月11日朝食、昼食)
場所 まるネコ堂(京都府宇治市五ケ庄広岡谷2-167)【会場へのアクセス】
定員 4人(他、定期メンバーが加わります)
参加者は本を読んできてください。
参加者は各回レジュメ(A4、最大2ページ)を提出できます(任意)。
形式自由。内容は過去の資料を参考にしてください。例『モモ』
会場に泊まっていただくことができます。
布団と寝袋がたくさんあります。宿泊なしで両日の参加もOKです。
注意:猫がいます。ゼミ中は会場には入れませんが、普段は出入りしています。アレルギーの方はご注意ください。
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