グレイを抽象するゲルハルト・リヒターのグレイ・ペインティング。

2020年5月22日金曜日

絵画

見たことがない絵について書くので、おそらく、ということが強いのだけどきっとこうだろうと思うことがあったので書いておくことにした。

リヒターは1968年頃から、「グレイ・ペインティング」と呼ばれるグレイで描いた作品をいくつも作っている。

今年に入って絵を描いていたときに気づいたのだけど、グレイは複雑な色だった。黒と白を混ぜて、グレイを作って塗っていた。同じ色で塗りつぶしたかったのに、うまくいかない。そんなに広い範囲ではないのに、ちゃんと混色したつもりでいても、端と端でなんとなく色が違う。

そして、後日同じグレイを作ってちょっと加筆しようとしても非常に難しい。同じグレイに混色できない。他の色での混色のほうがよっぽど後日の加筆も簡単だった。例えば、黄色とオレンジと青を混ぜて、同じ茶色をつくるほうが簡単だ。何度かやってもさほどの問題なくできた。

3色の混色でそんなに精度よくできているかといえばそれも疑わしいので、人間の目はグレイに対して解像度が高いのではないかと思った。


そんなとき思い出したのが、ゲルハルト・リヒターの「グレイ・ペインティング」だった。

グレイはいつまでだって遊べる色だ。グレイはとても複雑な色だ。そういう色の性質をダイレクトにリヒターは抽出(抽象)し、そのまま描いてるんだろうと思った。わたしは、多分、グレイ・ペインティングを知らなかったらこのちょっとしたグレイの特性をなんとなく見逃した。自分の描いている絵に対しては、実はグレイの複雑さは余計だった。フラットに描きたかったから。

でも、「グレイっておもしろいよね」って大真面目に言ってる人がいるから、「今は余計なんだけど、これは面白いわ」と思わされてしまった。なんかやられたと思った。

そして、そうやって「グレイっておもしろいよね」って大真面目に言っている人の「グレイ・ペインティング」が今はとても見てみたい。色にこだわる人の絵画が、美しくないわけがないと思う。きっと、「グレイ・ペインティング」は複雑で美しい。


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5月26日開催より、会場での参加も受付けます。

○7月28日ー8月1日:言葉の表出、夏合宿2020
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2019年6月1日発行雑誌「言語6」に寄稿文が掲載されました。